広告代理店に務めているときは、新聞会社の子会社だったため、新聞広告の制作に携わることが多かった。広告のターゲットはビジネスマン。もっと広くとっても生活者であり、その中に「外国人」が含まれることはなかった。
今の僕の仕事の幅は広がって、街の看板の文字情報を決める立場になることもある。その場合、ターゲットは街に住む人すべて。日本人も、外国人も、大人も、老人も、子どもも、読めるものでなくてはいけない。
この本は、主に「外国人」に対して、日本の公共サインが正しく機能しているのかを検証し、改善案を提示してくれている。
さて、あなたが「外国人」が読めるように公共サインを作るとしたら。日本語の他に、どのような言葉を書くだろうか?想像してみてほしい。
正直、私は「英語を書いておけばいいんじゃない?」くらいの認識をしていた。日本に住むくらいだから英語は多少なりともできるでしょ、という今から考えれば偏見だ。
そんな日本に蔓延している偏見や、考えていなさを、この本はじっくり一つ一つの事例を検証することで、新しい価値観へと更新してくれる。
例えば、「平成25年度 横浜市外国人意識調査」からこんなデータを紹介してくれている。
○日本語以外で日常会話のできる外国語
「中国語」(48.4%)
「英語」(38.7%)
○どのくらい日本語ができるか
「日本語の会話ができる」73.8%
「日本語を読むことができる」61.9%
「日本語を書くことができ る」52.9%
平成25年度 横浜市外国人意識調査
このデータから大まかに、日本で暮らす外国人は、母国語以外では英語よりも、日本語の方が精通していることがわかるだろう。
そして、外国人にとって日本語の習得における難所は「漢字」であり、「ひらがな」は読める人が多いのだという。
ここから推測できるのは、英語よりも、「ひらがな」を併記したほうが、日本で暮らす外国人にとっては理解ができるという可能性だ。
「英語を書けばいいっしょ」という偏見にまみれていた僕は、心底びっくりした。
この論点以外にも、「ローマ字表記」や「ピクトグラム」などといった要素も、この本では検証してくれている。本当にタイトル通り「公共サインを点検」してくれているのだ。
公共サインに関わる自治体の職員や関係者にはぜひ読んでもらいたい教科書のような本だった。
【書籍情報】
タイトル:『街の公共サインを点検する ——外国人にはどう見えるか』
著者: 本田 弘之、岩田 一成、倉林 秀男
発行: 大修館書店(2017年8月10日 初版発行)
定価:2,090円(本体1,900円+税)
ISBN: 978-4469213652