月: 2026年3月
グレイヘアをきれいにまとめた和服姿の女性が、英語の教科書を開きながらスマートフォンをじっと真剣な表情で見つめている。 朝、最寄駅のミスタードーナツには、英語の単語帳を開く女性がもう一人。白いスニーカーに肩には黒のダウンジャケットを引っ掛けて、肩肘を頬につきながらページを行ったり来たり。 天井のスピー …
息子と一緒の枕で寝る。のは窮屈だから、私の枕に乗った息子の重い頭をどかして、隣のベッドへずらす。 午前二時、娘にミルクをあげてからベッドに戻る。いない間に、息子は私のベッドで眠っている。 肩を縮こめながら布団に潜りこみ、自分の布団を息子にもかけて、隣同士で一緒に眠る。
暗い階段を、息子と一緒に登る。保育園の園庭でめいっぱい汚された小さな靴が、一段一段上がるたびに小さく音を響かせる。 今日から一週間、マンションのエレベーターは工事中。 1,2,3,4と数をかぞえながら登る。私と息子の声が暗い空間を満たしていく。7段登ったら、折り返してもう7段。息子は4が苦手で、飛ば …
西宮北口の兵庫県立芸術文化センターで、岡田利規『未練の幽霊と怪物―「珊瑚」「円山町」―』を観劇した。 建物は、モダンなギリシャ神殿のようで、灰色の細い柱外縁をぐるりと囲みその間からガラス窓が透けて見える。 二階の中ホール前に開場直前に到着すると、すでに二十人ほどが二列になって整列していた。久しぶりの …
娘を抱っこしていると、自分も抱っこして欲しいと息子はせがむ。親を赤ちゃんに取られた気分だろうに怒らないのがすごいし、もちろん抱っこくらいはする。 夕方に、赤ちゃんが泣き始めて抱っこしようとしたときにも、息子は足元まで来て抱っこをせがんできた。そう思ってしまった。 「バブバブ、だっこ、てーよー(赤ちゃ …
子どもは怠惰を許さない。 息子が覚えている言葉のいい間違えをすると、彼は顔をしかめて訂正する。 生まれたばかりの娘も、歩みを止めればすぐに目を開けて抗議の泣き声をあげる。 ソファーとルーフバルコニーにつながる窓にかけたカーテンの間の7mほどの距離を、娘を抱きながら行ったり来たり。 昼間は晴れていたと …
夜明けごろ、空は深い青色。もうすぐ消えるはずの街灯がはかなげに輝いている。僕は哺乳瓶を洗っていて、早くに起きた息子はプラレールで遊んでおりガタンゴトンとおもちゃの電車が走る音が後ろから聞こえてきて、赤ちゃんはベビーベッドで静かに眠っている。 しあわせが満ちていて、こんな時間が永遠に続くかのように思わ …
ニューボーンフォトを撮った。 撮影に来てくれたお兄さんはいい感じで、妻と一緒の時期にオーストラリアへワーホリに行き、有機農業とサーフィンを学んだのだそう。帰り際に名刺をもらったけれど、事業を4つも営んでいて、個人事業主の鏡だと思った。3歳の息子との接し方も、さすが三人の子を持つお父さんだと感心した。 …
娘へ。今日は君の退院日。 看護師さん総動員で(8人くらい)がお見送りをしてくれた。妻も僕も知っている人は一人もいなかったけれど、忙しい中で全員が手を止めて「退院おめでとうございます」とお祝いの言葉を送ってくれる場面は感動的だったよ。 義母の車の後部座席に君を乗せて、その隣に僕が座った。窓から入るはじ …